週末のChampagne Supernova

今夏に入ってから馬鹿の一つ覚えの如く白くまを消費している。ミルクの氷菓にフローズンの果物が乗ったアレである。しかも100円アイスでは飽き足らず、コンビニに売っている少し高い(300円くらい)やつにまで手を出してしまった。これを突き詰めると、もう「夏の間は鹿児島に移住する」が終着点となるのだろうか。
少し調べたら有楽町に鹿児島の物産館があって、併設のレストランでは本場の白くまを食べられるらしい。流石は日本中の資本の中心と言うべきか。鹿児島へ行く金も時間も気力も無いし、仕方ないから今年の夏はそれで乗り切ってやるよ。

先週の土曜はカメラを見に上野へ行った。
上野御徒町秋葉原周辺は昔からフィルムカメラを取り扱う老舗個人カメラ屋が多い。僕は随分前からバルナックライカが欲しかった。片手で包めるくらいのコンパクトさだったり軍艦部の造形美だったり、何より今から70年も80年も前のカメラが機能性と輝きを失わずにバリバリ現役として使えるのは、有り余るほどの浪漫である。オール機械式で、殆ど不可逆的な故障が存在しないのもいい。あとM型よりも安価で収まるのも有り難い。もうとにかく惹かれる点は色々ある。あるのだが、金が無いからウィンドウ越しに羨むに留まる。

そう言えば、CanonのF-1の修理可否について地元のキタムラからメールが来ていたんだったと思い出す。「修理できなくはないけどO/Hはできないし、レンズと合わせて5万円だけど、どうします?」
元々父親が使っていたもので、外見は綺麗だったがモルトがすっかりボロボロになっていたから中身もそれなりにくたびれているだろうと踏んで預けるだけ預かってもらったのだが、それにしても5万なら状態のいいF-1のボディが買えてしまいそうな気がする……。
まあ、いいや。ひとまず修理を頼んだ。こういうものを損得勘定で図ってはいけないのだ、元気になって戻ってきてくれることを願う。

アメ横はコロナ禍を受けて老舗の個人店が次々と閉店、やがてコロナ明けでインバウンド需要が増加したら、空き店舗を多国籍系飲食店が雪崩れ込むように埋めていったと聞く。確かに数年前と比べても、古き良き商店街と言うよりは一気に「アジアの台所」感が増したような印象がある。
大阪の黒門市場なんかはインバウンド需要をいいことに蟹の脚に何万も取るようになってしまった……みたいな話をどこかで聞いたが、アメ横はどうなんだろうか。まあ、僕含め首都圏に住んでいる若い人間がアメ横で肉やら魚やらを買う機会などよほど無いとは思うから、あまり関係無いんだろうけど。まだ雑に搾り上げられたドロドロのパインジュースを雰囲気で買ってしまう方がイメージできる。

帰路の途中、日暮里に着いたあたりで大学時代の友人から「秋葉原で飲んでいる」と連絡があり、引き返す。店に着いたらもう何億回も見たことがあるような面子だったが、思い返せば誰にしても半年近くは逢っていなかった。いずれこの間隔が一年になり、五年になり……と徐々に開いていくものだろうか。
二軒目にシーシャバーへ行った。秋葉原にはメイドが勝手にフレーバーを選んでくれるシーシャバーがあると聞いて若干期待していたが、別に店員はメイドではなかった。「なんかもう凄く甘いやつをお願いします」と言ったら本当になんかもう凄く甘いフレーバーのシーシャがやって来て、別にそのせいではないが吸った瞬間酷くむせてみっともない。別にシーシャバーなんてこれが初めてでもないだろうに。
どうでもいいことを話していたら終電を逃す。「まあ折角だし」と思えるのは精々1時くらいまでのことで、そこからはひたすらに始発の時間を気にするだけだ。店の棚にあった「AVタイトル制作ボードゲーム『珍卍』」を引っ張り出して、働かない頭をフルノットで回転させて理想的なAVタイトルの出力に勤しんでいたら、電車が動き出した。どうにも長い時間だった。
帰りの常磐線で、頭を前後に揺らしながらここは綾瀬……金町……馬橋……と、体感的には秒毎で窓越しに見える駅が目まぐるしく変わっていき、これこそが徹夜明けだったなと思い出した。確かに大学時代はよくやっていたし、武蔵小杉だと思って降りたら北鎌倉だったこともあった。もういい大人だから流石に最寄り駅で降りた。

徹夜明けの帰り道に聴きたい曲ベスト10があるとして、一位はChampagne Supernovaであると相場が決まっている。これはもう何十年も決まっている。2位以下は順不同で帰ってきたヨッパライ、後は各自好きな曲を適当に当てはめてください。